近年、家庭用の自動焙煎機が市場に導入されるなど、コーヒー豆の焙煎に対する関心が高まってきています。
コーヒー豆は未加工の状態で輸入されますが、コーヒーとしての香りや味は存在しません。
そのため、この豆にコーヒーらしい風味を与えるためには「焙煎」というプロセスが不可欠です。
この焙煎がコーヒーの風味に大きな影響を与える要素となっています。
「中煎り」や「深煎り」という言葉をよく聞きますが、実際の焙煎度は8段階に細かく分類されています。
この記事では、コーヒー豆の焙煎プロセスと焙煎度について詳しくご紹介します。
コーヒー豆の焙煎とは?
まず、コーヒー豆の焙煎とはどのようなことをいうのでしょうか?
焙煎とは、生の豆を高温で加熱して化学的に変化させ、コーヒー独特の風味を引き出すことを指します。
以下はコーヒー豆が出来上がるまでのプロセスです。
- コーヒーノキからコーヒーチェリーを収穫する
- コーヒーチェリーを精製して種を取り出す
精製した生豆は青みがかった緑色をしており、コーヒー特有の香りや味はありません。
焙煎によって豆は茶色に変わり、香りや味が生成されます。 - 種を焙煎する
種の焙煎では200℃を超える高温が用いられます。
この「種を焙煎する」という工程が、コーヒー豆の焙煎です。
8つの焙煎度と風味の違い
コーヒー豆は焙煎度によっても見た目と風味が変わります。
一般的に、浅煎りでは酸味が強く出ますが、深煎りになると苦味が増します。
このような焙煎度による味の違いを理解することは、自分好みのコーヒーを選ぶ上で非常に重要です。
焙煎度は加熱時間や方法によって異なり、以下の8段階で区切られています。
1. ライトロースト
2. シナモンロースト
3. ミディアムロースト
4. ハイロースト
5. シティロースト
6. フルシティロースト
7. フレンチロースト
8. イタリアンロースト
以下で、これらの焙煎度の特徴を順番に解説します。
ライトロースト(極浅煎り)
焼き色は薄茶色で、酸味が強く、苦味が少ないのが特徴です。
豆本来の風味を最大限に引き出すために選ばれることが多いです。
シナモンロースト(浅煎り)
焼き色はシナモン色で、酸味が際立ちますが、香りはややあり、苦味は少なめです。
クリアで爽やかな味わいが特徴です。
ミディアムロースト(中浅煎り)
焼き色は栗色で、酸味は残るものの、苦味も感じられるようになり、バランスの良い味わいです。
口当たりも柔らかいです。
ハイロースト(中煎り)
焼き色は深めの茶色で、酸味と苦味のバランスが良く、ややまろやかな後味が魅力です。
日本では最も好まれる焙煎度です。
シティーロースト(中深煎り)
焼き色は茶褐色で、適度な酸味とやや強めの苦味が特徴です。
深い味わいが楽しめます。
フルシティロースト(中深煎り)
焼き色は暗い茶色で、表面に油分が見えます。
酸味は薄れて苦味が強まりますが、甘味やまろやかさも感じられます
フレンチロースト(深煎り)
焼き色はほぼ黒に近く、油っぽいツヤが特徴です。
ほとんど酸味を感じない強い苦味と深いコクが特徴です。
イタリアンロースト(極深煎り)
焼き色は完全に黒く、焦げたような香りが強く、苦味が非常に強調されます。
極めて深い焙煎で、強烈な苦味と濃厚なコクがあり、特にエスプレッソに適しています。
豆の特性に適した焙煎度
すべてのコーヒー豆がすべての焙煎度に適しているわけではありません。
たとえば、中煎りで特性が際立つ豆でも、深煎りにするとその個性が失われることもあります。
逆に、どの焙煎度でもその特徴がしっかりと現れる豆もあります。
専門のロースター(焙煎士)は豆の特性を見極めて、その特性が最も引き立つ焙煎を施します。
焙煎後のコーヒーが最も美味しい期間
焙煎後のコーヒー豆は、時間が経過するにつれて風味が変化し続けます。
これはコーヒー豆内に含まれる炭酸ガスが徐々に放出されるためです。
そのため、焙煎直後の豆を使用すると、炭酸ガスが多く発生し適切に抽出できないことがあります。
では、焙煎後どれくらいでコーヒーが最も美味しくなるのでしょうか。
これは豆の種類や焙煎の度合いによりますが、一般的には焙煎から2~3日後が最も美味しいとされています。
この時期を過ぎると、炭酸ガスが適度に抜け、コーヒーが美味しくなります。
日々微妙に変化する味わいを楽しむことは、コーヒーの大きな魅力の一つです。
美味しいと感じたコーヒーの焙煎度を覚えておくと、コーヒー選びに役立ちます。
ぜひ自分に合った焙煎度を見つけて、コーヒーを楽しんでください。
5つの焙煎方法と特徴
焙煎は生豆に熱を加える単純な行為に見えますが、同じ豆を使用してもその風味は焙煎方法によって大きく変わります。
以下で、焙煎方法と特徴をご紹介します。
直火焙煎
直火焙煎は、直接火を用いて豆を焙煎する方法です。
通常は穴の開いたドラム缶を使用して直接熱源で加熱します。
この方法は、豆の特性を活かしやすく、豊かな風味と香りを引き出すことができます。
その反面、火加減の調整が難しく、焼きムラが発生しやすくなります。
熱風焙煎
熱風焙煎は、熱風を利用して豆を焙煎する方法です。
ドラム缶の中に豆を入れて高温の熱風を吹き込みます。
この方法では温度が均一に保たれやすく、大量の豆を一度に焙煎できます。
味わいは直火焙煎よりもさっぱりしており、清潔感のある風味が特徴です。
半熱風焙煎
半熱風焙煎は、直火と熱風の特性を併せ持つ焙煎方法です。
熱風とともに加熱されたドラム缶を使用します。
豆が直接火に触れずに焙煎されるため、直火ほどの強い個性は出ませんが、熱風焙煎よりも豊かな味わいが得られます。
炭火焙煎
炭火焙煎は、木炭を使用して豆を焙煎する方法です。
遠赤外線によって豆を均一に焙煎できるため、非常にクリアな風味が特徴です。
一方で、火力の調整が難しく、コストも高くなります。
ダブル焙煎
ダブル焙煎は、焙煎を一旦停止して豆を冷却し、再び焙煎を行う方法です。
この方法では、新鮮な豆の水分を適切に調整し、焙煎のムラを減らすことができます。
そのため滑らかで均一な味わいを実現しますが、時間とコストが増大する欠点があります。